競走馬を引退した後、種牡馬入りや繁殖入りを果たす馬はほんの一握りの馬です。種牡馬・繁殖入りを果たしたとしても、種牡馬・繁殖馬も結果が求められる厳しい戦いであり、実績を残さなければ素敵な第二の馬生を終えた後はどうなるか分かりません。経済動物であるサラブレッドの馬生というのは私達が想像している以上に過酷なものなのです。
毎年約7000頭近くの競走馬が誕生していると言われておりますが、その9割以上が殺処分されている状況です。馬の殺処分のような繊細な課題を解決しようと現在さまざまな団体が活動しており、先日当サイトでも紹介した生産地主体のクラウドファンディング「Umaar's」もそうした団体の一つです。それでも引退後の受け入れ先は現状ではまだまだ足りておらず、引退馬のフォローについては多くの課題が残されているというのが現状です。
そんな中、秋田市河辺にある「あきた乗馬クラブ」が17日、引退競走馬を支援する「日本サラブレッドコミュニティクラブ(TCC)」から、東北の乗馬施設では初となるシェルターホースの受け入れが決定したことを発表しました。同日、同クラブの公式フェイスブックサイトで明かしました。受け入れは東北の乗馬施設では初となるようです。
TCCは昨年に当サイトでも紹介させていただいたのですでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、引退馬のセカンドキャリアを支援するクラブです。行き場のない引退競走馬を受け入れ、引退馬の一口オーナーを随時募集しながら、その馬に集まった口数で受け入れ可能な乗馬施設とマッチングしていくという取り組みを行い飼育やリハビリを実施しております。言わば行く先のない引退馬たちの一時的な“シェルター”です。
これまで28頭を新たな活躍の場として全国の乗馬クラブに預託しており、中には2015年のチャンレンジCの勝ち馬フルーキーや、同年の京成杯の勝ち馬ベルーフ、同年のマイラーズCの勝ち馬レッドアリオンといったかつて重賞戦線で活躍した懐かしい名前も見られます。
今回29頭目の預託馬としてあきた乗馬クラブへ預託されるのは、中央競馬で7勝を挙げたハリケーンバローズ(セ7)です。怪我のため昨年6月に引退しており、現在はTCCの厩舎に滞在しながら一口オーナーの参加が募集されている状態です。規定の25口が集まり次第、あきた乗馬クラブへ向かう予定となっております。
このように、こうしたクラブや団体による活動が引退馬たちの現状を伝えて支援者を募っていくことで、1頭でも多くの引退馬を穏やかな生涯へと繋げていくことができます。全体で見ればまだまだ受け入れ先は足りていないのが現状ですが、人間に貢献してきた馬たちが1頭でも多く余生を過ごせるような仕組みができることを個人的には願っております。