馬券検討の際に、重要なポイントとなるのが前走の成績であることはマイルチャンピオンシップに限らないこと。殊更GⅠとなれば平場以上に前走の成績に注目をしなければならない。何故なら、GⅠという本番を見据えた競馬が出来ているのかどうかが、本番での好走をするか否かを見分ける大きなポイントになるからだ。
競走馬の調子のバロメータは、個体差はあると言っても長期間維持できるわけではない。これがピークに来れば好調、下がっていけば不調となる。当たり前の話だが、GⅠ競走は、この調子のバロメータをピークに持ってこなければならない。各地で勝利を積み重ねてきた素質馬たちが集まる頂上決戦。生半可な仕上げでは勝てないのだ。
そこで重要になるのが前哨戦で、あくまで叩き台としてGⅠを本番としている馬と、実を取って稼ぎにくる馬に分けられるのだ。しかし、前哨戦で好走をすれば人気になるし、凡走をすれば人気が落ちる。だからこそ馬券的な妙味が増し、GⅠ競走で思わぬ好走馬が出てきたりするわけだ。そういった意味では、いかに前哨戦でクサい負け方をしているかが重要になる。
前走内容から非常に怖い一頭なのがガリバルディ
そしてそのクサい負け方をした馬の筆頭が、このガリバルディだ。
前走は富士Sに出走し、11頭立ての10番手追走という脚を溜めるレースをしてみせた。残念ながらレースそのものはスローペースだったので末脚不発に終わり6着敗退。とは言え勝ち馬から0.3秒であり十分射程圏内であった。そして注目したいのが上がり3Fのタイムで、次点を0.2秒上回る最速の33.4秒だった。この上がりタイムは、前走成績による馬券検討には欠かせない要素。当然、最速の馬は歯車が噛み合えば上位進出も現実味を帯びてくる。そういった点で、前走上がり最速のガリバルディは実にクサい負け方をしていたのだ。
父ディープインパクトは、もはや説明不要の名馬であり名種牡馬だ。過去のマイルCSでも憎らしいほど上位好走馬を輩出している。切れ味ならガリバルディも過去の好走馬に負けてはおらず、ここは非常に狙いどころの一戦と言えるだろう。
巻き返しが期待されるフィエロ
2014年、2015年のマイルCSで2年連続2着、2016年の安田記念で3着と、GⅠレースでの実績もあるフィエロが今年も出走してくる。ここ2年連続で2着に好走しているレースなので、今回こそという思いもあるだろうが、前走スワンステークスでの凡走が気がかりである。スワンSでは1番人気に支持されたものの9着と大敗だった。一昨年、昨年も今回と同じく前哨戦でスワンSに出走し、3着、2着と好走してきたという経緯もあるため、今回の9着は不安材料であると言わざるを得ない。
安田記念では先着したサトノアラジンに追い込みを決められたスワンSだが、5歳馬でまだ伸び代の感じられるサトノアラジンに対してフィエロはもう7歳。競走馬としては高齢の部類に入り、能力的なピークは越えた結果の敗退だったと見るのが素直な見方になるだろう。
休み明け凡走も、末脚には安定感ありサンライズメジャー
サンライズメジャーの2016年シーズンは、初戦のダービー卿CTとマイラーズCで当馬の戦法の1つである逃げ・先行パターンで粘るも、共に0.4秒差ながら馬券圏外。
ところが3戦目の京王杯SCでは一転して時折見せる追い込み戦法に転換。上がり3Fを32秒台前半という究極レベルの末脚を披露し、人気薄ながら2着となった。ハマれば一線級相手でもまだ十分勝負になるところを見せた。
ただ、休み明けの秋初戦であるスワンSでは、同じく追い込みに賭けるも末脚不発のまま13着と大凡走。レース上がりと自身の上がりがほとんど一緒で、馬群の流れのままゴールまで流してしまったレースという印象だった。着順や着差以上に、かなり不満足な内容と言えよう。2着になった京王杯SCで1着を争ったサトノアラジンがここでも勝った。着差は1秒、上がりタイムは0.8秒差。京王杯SCでは同レベルの末脚勝負だっただけに、同じ走りができていればスワンSでも勝ち負けできた可能性はあったが、最終コーナーに入る前あたりから騎手が立ち上がるように手綱をひいている。特に危険な場面などはなかったが道を探していたのだろうか。そのまま最後の直線では両脇に挟まれる形で不利を受けた。これでは自慢の末脚も発揮しようがない。
京王杯SCで手綱を取ったのは戸崎騎手で、スワンSでは松山弘平騎手。こういったところがリーディングジョッキーとの力の違いといったところか。マイルCSでは四位騎手への乗り替わりが想定されている。ここは鞍上強化で間違いないだろう。
陣営も上積みは大きいと認識しており、本番での好走は大いに期待できる。とは言え、好調時にも不調時にも負けているサトノアラジンが今回も出走のため、ここで打ち負かすのは少々虫が良いが、前走13着に惑わされないようにしていただきたい。