芝マイル実績3戦3連対のスノードラゴン
スノードラゴンと聞いて、マイラーと想像される競馬ファンはほとんどいないことだろう。実際に競走生活の大半は1200m前後に終始しており、それこそこの距離であれば芝でもダートでも構わず走っている。だからこそのイメージだが、実はデビュー戦から3戦はマイル戦を走っていたのだ。
スノードラゴンの芝マイル戦の戦績は3戦0勝2着3回。いわゆる連対率100%である。うがった見方をすれば勝ち切れなかっただけとも捉えられるが、実際に距離がダメならここでも惨敗しておかしくはない。ところが、スピードに任せて先行し、そこでしっかりと2着に残っているのだ。
とは言え新馬・未勝利戦を勝ちきれないのも事実。結局、陣営もこの3戦で距離短縮を実施して連勝を決めている。そして連勝後に出走をしたヒヤシンスS(ダ1600)で7着に負けたことで、スノードラゴンのその後の競走生活の方向性は決まった。
後にスプリンターズSを制することになるので、陣営のこの判断は正しかった。しかしながら、年齢的にズブさも増して、さらに競馬を覚えて控えられるようになった今なら、マイル戦の方が合うような気がしてならないのだ。今回は実に約6年ぶりの芝マイル戦出走になるが、後方で脚を溜めさえすればそれなりに脚を使ってくるように思う。
当然人気は出ないだろうが、一長一短のマイル戦線においては別路線組からの殴り込みは非常に魅力がある。
中距離重賞戦線で活躍するダコール
後方からのマクリ差しを武器に、中距離重賞戦線で実力を発揮してきたのがダコールだ。戦績を見ればわかる通り、どんなレースでも掲示板以内に好走しているケースがかなり多い。条件に関係なく比較的安定して走れるのがこの馬の強みだ。
スノードラゴンとは反対に主戦場としている距離が中距離であり、マイルCSはやや距離不足かもしれない。しかしこちらも若駒の頃にはマイル以下でも使われており、新馬勝ちもマイル戦だった。その上ディープインパクト産駒はマイルにめっぽう強く、その適性通りに走ったとしても驚きは少ない。それよりも問題は格のほうだ。
これほど重賞で安定した成績を残しているにもかかわらず、GⅠ出走歴はわずか1回しかない。そのGⅠは昨年の天皇賞・秋で、14着に惨敗している。8歳馬なのでレース経験の豊富さは他馬にも引けを取らないが、GⅠ経験の浅さだけは気になる。
前走は名手M・デムーロ騎手を鞍上に迎えて久々の勝利を狙ったが、まさかの16着に大敗。G1が舞台でのことなら力不足でわかるがG3新潟記念でのこと。普段は安定して走る馬だけに、やや不可解な負け方だった。ただ、この1度で状態を決めつけてしまうことはできない。元々能力が高いことは今までの戦績が証明しているし、レース後半で見せてくれる一瞬の脚にはいつも期待感を抱く。強豪ぞろいのマイルCSなのは間違いなく実に5年5ヶ月ぶりのマイル参戦。ロマンを求めて切れ味鋭い末脚に期待してみるのも面白い。
2年前の勝ち馬ダノンシャークが逆襲に燃える
一時期の安定感は非常によく主役クラスで活躍していたダノンシャークは2014年にこのレースを勝っており、2年ぶりの戴冠を目指して今年も挑戦することになる。
とは言え当時の精彩は欠いており、一昨年のマイルCSから一度も勝利はない。一応今年に入りマイラーズCを連対しているため昨年に比べるといい状況で出走できているが、やはり年齢的な衰えが徐々に見えつつある。確かに直線は伸びているが、徐々にズブさが出ているのか、思ったほど弾けていない。
当然年齢が若返ることはないので、現状では頑張って走っているが、展開次第なところも出始めている。それでもマイラーズCでは、中団から直線は抜け出し2着と、まだまだ通用するところは見せている。直線が坂になるよりも平坦の方がいい傾向にあり、脚が長く使えるような状況になれば勝利のビジョンも見えてくる。
昨年のマイルCSこそ10着と大きく負けたがマイラーズカップでは2着。実はこの馬は相当な京都巧者であり総戦績は15戦して【4-5-3-3】となり馬券を外したのはたったの3回。複勝率で言えば80%にも及ぶ。若かりし頃の平場のレースも含むため高く出てしまうが、重賞のマイルに限っても9戦【2-3-2-2】で複勝率77.8%とさほど変わらない安定感がある。とは言え圏外となった2回ともがマイルCSということもあり、やはりGⅠの過酷さは伺えるが、8歳低迷期ということで簡単に切って良い馬ではないのは間違いなく、京都ならばもしかしたら、という期待感はある。
ロマンだけじゃない8歳勢
8歳と高齢になってからマイルへと回帰してきたスノードラゴンとダコール。たしかにここでダコールを買うのは少々ロマンが勝っている嫌いはあるが、今回のメンバーを見てもGⅠウィナー4頭のうち2頭が8歳馬。残りの2頭に関してもG1においては2年半前の皐月賞とNHKマイル以来勝てていないイスラボニータとミッキーアイルと、絶対と言えるような本命は不在とも言える。
何と言っても、スノードラゴン・ダノンシャークはG1馬なのだ。G1馬を軽視して痛い目を見るなど、思い当たるフシのある競馬ファンは多いだろう。
前走のスプリンターズSで、前残りのペースの中でも後方10番手から追い込んで来たスノードラゴン。京都で圧倒的な安定感を誇り、前走マイラーズCでもその片鱗を見せつけたダノンシャーク。まだ終わっていないG1馬。これらは当然、馬券対象の有力な一頭であることは間違いないだろう。何度も言うが、絶対に軽視をしてはいけない馬である。