マイルチャンピオンシップへ出走するイスラボニータとミッキーアイル。共にGⅠを1勝ずつだが、2勝目に届きそうで届かない馬だ。生まれ年こそ同じだが、クラシック王道路線を歩んできたイスラボニータに、マイル路線のミッキーアイル。イスラボニータが昨年からマイルにも顔をだすようになればミッキーアイルは短距離路線へ切り替わったところ。何の因果か、両者は今回がようやく初対戦となる。
実は言語違いでアイル(英語:isle)とイスラ(スペイン語:isla)は共に島を指す単語。繋がりそうで繋がらなかった2頭が共に覇権を取り戻すべく、ようやく相まみえるこの1戦。改めて2頭を振り返ってみたい。
ジェニュインに重なるイスラボニータ
オールドファンなら懐かしい名前かもしれない、95年の皐月賞馬ジェニュイン。今でこそ大種牡馬として名を轟かしているサンデーサイレンスだが、記念すべきクラシック第一号の勝ち馬がこの馬だった。その後、日本ダービーにも出走をして2着、秋の天皇賞でも古馬に混じって2着してみせた。しかしその後に低迷をしてしまい、再度の力を見せたのが皐月賞を制覇した翌年の96年マイルCS。ここで先行策から力強く抜け出し、1年半ぶりに勝ち星を、それも嬉しいG1で飾ったのだ。
どうもイスラボニータを見ていると、あの時のジェニュインとオーバーラップをしてしまう。奇しくも父はジェニュインと同期のフジキセキ。社台レースホースの服色で走る様も一緒だし、皐月賞を制覇して日本ダービーを2着してみせたのも一緒である。ついでに言えば、同年の秋の天皇賞でも上位に好走した点でも被る。とにかく、キャラクターが非常に似ているような気がしてならないのだ。
イスラボニータは血統が父フジキセキ、母父がコジーンとなっている。フジキセキと言えば、足掛け6年間ダートG1戦線で活躍をしたカネヒキリの父、コジーンと言えば、朝日杯3歳Sを制覇した後で低迷し、4年後の安田記念で奇跡の復活を成し遂げたアドマイヤコジーンの父でもある。イスラボニータもまだまだ老け込むような年齢ではない。
実際に前走の富士Sでは好位追走から2着に残っており、叩き台としては上々のスタートを切ることができた。昨年のマイルCS3着馬でもあり、今回はチャンス十分と言えるだろう。偉大なる先輩ジェニュインに続き、マイルCSを鮮やかに優勝してもらいたいものである。
ミッキーアイル実績十分のマイルコース
ミッキーアイルは、今年はスプリント路線しか出走していない。高松宮記念のあと長期休養することとなり、結果的に復帰したのがスプリンターズステークスである。ぶっつけ本番ながらも2着に入り、スプリンターとしての適性を十分にアピールする結果となっているが、元々はマイルを中心に走っていた馬。優勝したNHKマイルカップでの走りは見事であり、あの逃げ切りは展開さえ向けば多くの馬と互角にやりあえるとも感じられていた。
3歳まではマイル路線を突き進んだが、4歳からスプリントレースにも出走するようになった。ここで高松宮記念2着などの実績を残しているが、反対にマイル戦線で結果が出なくなっている。NHKマイル以前までは6戦5勝2着1回というほぼ完璧な走りだったのに対し、それ以降のマイル戦の着順は16, 13, 15着といずれも使ったレースがGⅠとは言え惨憺たる結果。これは気性面の問題とされ、逃げてゆっくりと走らないとこの馬はマイルをこなせないと見られている。そのためスプリント路線への転向はベストだったと言える。
今回は直線が平坦コースとなっており、逃げ切りという観点では比較的やりやすいコースではあるが、スプリントレースばかり利用しているので、距離が戻った時に戸惑いがないかは気になるところだ。もし昔のレースができれば、まだマイルくらいならこなせるだろうが、なまじ近走成績が良いだけに錯覚しかねないが、マイルで好走をするためには大復活を遂げる必要があり、マイルでのスランプを脱したわけではない。