突然ですが・・・圧倒的に強いと判断した馬にもし乗ったらどうなるでしょう?正解は「不利を受けにくい外を回す」です。
ディープインパクトに騎乗していたときの武豊騎手が「レースで一番気になるライバルは?」と尋ねられたときに「コスモバルク」と回答しています。これは能力的に手ごわい相手という意味ではなく「必ず4コーナーをまわってからフラフラしてモタれるから」とのこと。ですので、ディープインパクトのレースを見直すとわかりますが、コスモバルク出走時のレースでは、かなり早めにコスモバルクを外からパスしています。
また、メイショウサムソンで勝った秋の天皇賞でも、インがあかない可能性について尋ねられたときに「前を走るコスモバルクは左回りだと必ず右にふくれると知っていたから、自信をもってインを突いた」とコメント。事実、外をまわした馬たちはエイシンデピュティをはじめ、コスモバルクの斜行による大きな不利を受けています。
そういった意味でいかにも中途半端だったのがスプリンターズSのビッグアーサーでした。絶対王者とは言えないまでも最有力馬だったわけです。1枠をひいた時点で嫌な予感は鞍上もしたんでしょうが、1分ちょっとの電撃戦ですのでゲートを出てから考える、というわけにもいきません。結局何もさせてもらえず惨敗に終わりました。
馬の能力に自信があるなら、前哨戦で成功したハナを切るという選択肢もありました。ハクサンムーンのような絶対にハナを主張する馬は今年はいなかったわけです。
万一出遅れたら・・・あるいはこの枠で下げたら間に合わない、という意識があったのかもしれませんが、高松宮記念は堂々と馬場の真ん中を突き抜けたわけで、同じ負けるにせよ、王者の競馬をしてほしかったと思うのはわたしだけではないでしょう。
そういった意味で、強い馬に乗ったときは本当に自信を持って強気に乗ってくるムーア騎手が空いていたのは幸運です。距離不安が予想されたモーリス騎乗の秋の天皇賞では、東京コースにもかかわらず、早め先頭という馬を信じた王者の競馬で勝利。昨年のジャパンカップではラストインパクトでイン突きもしていますが、基本的に強い馬に騎乗しているときは、わざわざリスクのあるインは突いていないイメージがあります。
馬も人も、そしてファンも消化不良だったビッグアーサーの輝きを、福永騎手の負傷欠場という残念な偶然の産物とはいえ、今回騎乗することになったムーア騎手にぜひ取り戻してもらって、気持ちよく2017年を迎えたいものです。