人も馬も、デビュー直後からスッと頭角を現すものもいれば、叩いて叩いてようやく頭角を現すものもいる。それが才能と言われてしまえばそれまでだが、逆にこうした才能を努力と叩き上げ根性で破っていく様を見るのも楽しい。俗に言う判官贔屓というやつなのかもしれないが、スマートに勝ち上がっていくエリートだけを見て熱狂しろと言われてもなかなか感情移入できないのは皆さんも同じだろう。
雨が降ったら侮れない存在の叩き上げ根性娘ゴールドケープ
叩いて叩いて頭角を現し始めたのがゴールドケープである。
デビューは6月。ここを8番人気で8着で完走をした。言ってみれば、どこにでもいるような凡庸な馬である。そして2戦目に変わり身を見せた3着をしてみせると、次々走の2歳未勝利戦で1着となって、ようやく待望の1勝目をあげることができた。気が付けば10月も下旬。そろそろ来年を見据えて、ドッシリと腰を据えて頑張る時である。がしかし、ゴールドケープはここからが凄かった。
2週間後のファンタジーSで早くも重賞に挑戦し5着と掲示板を確保。するとさらに2週間後の白菊賞に出走し、ここを9番人気ながら勝ってみせたのだ。しかもこのレース、大雨が降って他馬がアップアップする中で、一頭だけスイスイと気持ち良さそうに駆けての1着である。叩き上げの根性が、この430㎏前後の小柄な牝馬にシッカリと宿らせていたのかもしれない。
ちなみに、母のジュエルオブナイルは小倉2歳Sの覇者。決して血統が悪いわけではない。そして母の父は、グシャグシャの不良馬場だったスプリンターズSで、後方から一気に追い上げて2着したデュランダル。あの白菊賞でスイスイ走ったのは、この血統に起因しているのかもしれない。
これまでの最高人気は5番人気とかなり地味な存在のゴールドケープだが、馬券に絡んだ3戦は11番人気、5番人気、9番人気とかなりの穴馬券を演出してくれている。パンパンの良馬場だとどうかだが、一雨、いや二雨くらい降れば再度の激走を演じてくれるのではないか。叩き上げの根性娘に期待したい。
逃げて粘る競馬で好成績を収めているショーウェイ
ショーウェイは父にフェブラリーSの勝ち馬で、朝日杯FS2着であるメイショウボーラーと父にフジキセキを持つリアルメンテの仔である。母リアルメンテの兄弟には安田記念勝ち馬のリアルインパクトやNHKマイル3着のアイルラヴァゲインがいるなどマイルに実績のある近親が多い印象だ。鞍上はデビューから全レース松若風馬騎手である。
7月の小倉でデビューし、1200mと1400mのレースを中心に4戦して1勝であるものの、重賞のファンタジーステークスではミスエルテから1馬身1/4差の2着と好走経験もあるのだ。着外はききょうステークスの一回だが、成績の良かった未勝利戦やファンタジーステークスでは父メイショウボーラーのように早めに先頭に立ち、粘り込むような競馬をしたレースが功を奏した印象である。
阪神JFの距離である1600mの経験がないのが不安ではあるが、阪神競馬場は内回りコースではあるものの、ききょうステークスで経験があるのが強みだ。レース自体はスタート直後立ち遅れぎみであったために、後手に回ってしまったために成績は良くないが阪神JFではスタートが成功して父メイショウボーラーのような逃げを見せることが出来れば面白い一頭である。
1マイルの距離延長に対応出来るかクインズサリナ
新馬戦、フェニックス賞と連勝したものの、その後は小倉2歳S、もみじS、ファンタジーSと3戦していずれも4着以下のクインズサリナ。
キャリアは5戦と経験豊富ながら、1200mで2勝した後、凡走を繰り返していることから、伸び悩みか、或いは頭打ちと言えなくもなく、1マイルとなる阪神JFでは、戦績的に強調出来る点は、ほとんどないと言えよう。
血統的にも、父ダノンシャンティに母父ウォーニングと、いずれも短距離色が強い上、母のケイアイギャラリー自身が、スプリント戦を得意としていたことから見ても、1マイルの距離延長が有利になる点は見当たらない。
ただ、もみじSまで先行して頭打ちだった当馬が、前走のファンタジーSでは脚質を完全に転換して、追い込みにしたという点は注目出来よう。
上がり3Fも33.6と、レースの上がり3Fの34.5を大きく上回り、着差も0.2秒差と僅差にすることに成功した。それまでの凡走である、小倉2歳Sの1.3秒差、もみじSの0.6秒差と比較しても、かなり中身のある敗戦と言えよう。
阪神JFでは、後方からの差し馬が、かなり有利となる阪神外回り1マイルのため、この脚質転換が活きてくる場面が、全くないとは言えまい。