【追憶の名馬面】スペシャルウィーク 第2話「希望の光」

ダービー馬として迎える秋。更に逞しさを増したスペシャルウィークは、菊花賞トライアル京都新聞杯に挑んだ。秋の柔らかな陽射しが降り注ぐ空模様だったが、馬場は稍重。しかし、世代の頂点に立った者が、渋った馬場くらいで根を上げることは許されない。

力強く芝生を蹴散らし躍動したダービー馬は、キングヘイローとの叩き合いを制して、堂々と秋の進軍を開始した。

11月8日。第59回菊花賞。弥生の空の下で出会った馬達の戦いは、最終戦を迎えた。

人気はスペシャルウィークとセイウンスカイに集中した、2強ムードの様相を呈し、やや開いて、春三強を形成したキングヘイロー、ダービー3着のダイワスペリアーと並んだ。

春は少し遠慮がちだったセイウンスカイが、ノビノビと淀の馬場を疾走する。マイペースに運ぶ彼らを、スペシャルウィークと武は、いつも通り後方から睨んでいた。

坂を越えてもセイウンスカイはマイペース。武が動く。スペシャルウィークが、二冠へ向かって追撃を開始した。武が天才なら、横山は奇才と言えるかもしれない。あっと驚くようなシーンを、この男はいつも見せてくれる。

植え込みを回って直線へ入った時。絶妙なタイミングで、横山はセイウンスカイにGOサインを出した。機敏に受け取った白い馬は、一気に後続を突き離した。内でキングヘイローが、ジリジリと伸びている時、彼方からスペシャルウィークが、メジロランバートと併せ馬で飛んできた。しかし、残り200mを前に、勝負は決していた。

3:03.2。3000mの世界レコードで逃げ切ったセイウンスカイが、1998年のクラシック戦線を締めた。

クラシック戦線が終わると、若駒達は次の戦いに進んでいく。相手は、百戦錬磨の古馬達。この先、生き残るには、歴戦の猛者を打ち負かさなくてはならない。競走馬として生きるサラブレッドに、安穏とした時間は無いのだ。

世界の競馬に精通する白井は、国際GIであるジャパンカップに拘りを持っていた。
ダービーと同じ府中の2400m。ライバルは強力だが、この馬なら好勝負になる、と期待を込めて世界戦へ彼を送り込んだ。

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