J.モレイラ騎手、騎手人生の集大成は“日本”で
2015年に、M.デムーロ騎手とC.ルメール騎手が通年免許を合格し、現行制度では初となる外国人JRA騎手が誕生しました。以降の2人の国内での活躍は、改めて説明するまでもないでしょう。
今ジョッキー界で話題となっているのは、日本での通年免許獲得を目指す3人目の刺客、香港競馬が誇るナンバー1ジョッキー、ジョアン・モレイラ騎手(34)です。
2013年10月から香港ジョッキークラブ所属騎手として騎乗を開始しており、4年半であげた勝利数は約700勝にも及び、3期連続リーディングトップを獲得するなど、圧倒的な成績を誇る香港のトップジョッキーです。現地のファンやメディアからは雷神と呼ばれ、数々の記録や功績を残してきたことからマジックマンという異名が付けられるなど、たくさんの人々に親しまれてきました。
日本国内においては、短期免許で来日した16年の夏には札幌競馬場でJRA最多タイ記録となる騎乗機会7連勝を記録。また、日本馬のモーリス、サトノクラウン、ネオリアリズムで香港G1を優勝し、ドバイではヴィブロスで優勝を果たしていることから、日本国内でも信頼の厚い騎手としてその名を轟かせてきました。
そんなモレイラ騎手が、来シーズンの香港競馬は免許更新を行わず、今秋のJRA騎手免許試験受験を受けることを決意したと、今月7日に香港メディアが報じたのです。
日本国内にとってもこれは大きなニュースですが、人気トップジョッキーのまさかの移籍希望発言は、現地香港にとっては激震の大ニュース。「一体何故?!」ファンやメディアが気になるのはその理由でしょう。日本ではレースの賞金額の5%が騎手へ支給されますが、香港では10%と日本の倍です。香港競馬の賞金額は世界でも最高クラスであることを考えれば、モレイラ騎手ほど勝利している騎手ともなれば収入面においては間違いなく日本よりも稼げるでしょう。香港の英字新聞のサウスチャイナ・モーニング・ポストで、モレイラ騎手は以下のように語りました。
「実際、日本よりも香港のほうがはるかに稼げると思う。僕の予想では30%くらい多いと思う。でも、お金の問題じゃないんだ。シンガポールを拠点にしていた頃から日本での騎乗を考えていた。ずっと日本に行きたいと思っており、2012年には短期免許を申請したが、すぐに却下された。僕にはまだ実績が足りなかったんだ。だからここ(香港)に来た。」
2015年には札幌のワールドオールスタージョッキーズで7勝をあげ優勝し、翌年も参戦して5位にランクインするなど、徐々に日本での実績を積み上げていったモレイラ騎手。活動の拠点となっていた香港でも、モーリスで香港G1のチャンピオンズマイルを優勝し、堀調教師と良いパートナーシップを築いていきました。モレイラ騎手も日本の調教師と関係を築けたことについて「これは香港に来て良かったことの一つ。実際に日本へ行く機会を会えてくれた。」と語っており、実際にその後来日した際は堀厩舎の馬に乗る機会が増えております。
努力と積み上げてきた実績がようやく実を結んで、日本への再挑戦するチャンスが巡ってきたモレイラ騎手ですが、現在JRA騎手として活躍するミルコ騎手も最初は不合格になりましたし、イタリアのD.バルジュー騎手も15年と16年に2度受けておりますが、いずれも不合格でした。賞金の高さから日本競馬に惚れ込み、短期免許で来日を続ける外国人騎手は多いですが、通年免許となると一気に狭き門となります。それでも挑戦するモレイラ騎手は、以下のように意気込みを語っております。
「50歳になって人生を振り返った時、やらなかったことに対して後悔をしたくない。後悔するなら、やろうとして失敗したことに対してのほうが良い。おそらく僕は、そう長く乗ることはないだろう。騎手はあと5~6年くらいと見ている。40歳くらいで引退を考えることになるだろう。だからこそ、今(日本へ)行くんだ。」
香港で約5年騎手をしたことを考えると、40歳なら引退は日本ですることになる可能性が高い。騎手人生の最後の舞台に日本を選んだ超大物ジョッキーがもし本当にJRAへ移籍することになれば、日本人騎手だけでなく、通年免許を取得してからリーディング上位の常連となっている先輩の外国人騎手2人にとっても、脅威の存在となることは間違いないでしょう。