2017年より競馬の競争ルール変更。「邪魔した者勝ち」の降着ルール、来年も変更なしか?

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JRAは12日、公式ホームページにて2017年1月1日(祝・日)から競争ルールの変更となることを発表。

また、来年1月14日(土)より、JRAホームページにて全てのレースの全周パトロールビデオを公開することを発表しました。

競争ルールの変更点は以下の通りです。

2017年競争ルールの変更点

【1.】落馬再騎乗の禁止
ルールの国際調和及び騎手と馬の保護の観点から、競走において騎手が落馬した場合に、再騎乗して競走を継続することを禁止します。
※騎手が落馬した時点で、当該馬は競走を中止したものとします。

【2.】パッド付鞭の義務化
ルールの国際調和及び動物愛護の観点から、競走において騎手が使用する鞭を、パッド付鞭に限定します。

競争ルールの変更は珍しいことでなく、最近だと2013年には降着のルールが変更されたことが当時は話題になりましたね。競争ルールの変更はレースに直接的な影響を与えるのでとても重要なことです。

つい先月、11月20日(日)に京都競馬場で行われたマイルCS(G1)なんかはこの降着ルール改変の影響が大きく見られたようなレースであったと筆者は強く感じます。

レースの最期の直線で、浜中騎手騎乗のミッキーアイルが外側へ斜行し、ネオリアリズム、サトノアラジン、ディサイファ、ダノンシャークの進路が狭くなりましたが、被害馬4頭のいずれも、その影響がなければ加害馬に先着したとは認められず、降着はナシといった内容でした。2013年以前の降着ルールであれば違う結果になっていかもしれませんね。

2017年に競争ルールに変更があると聞いて、マイルCSの一件があったので、いよいよ改変か?と思ったのでしたが、降着ルールに関しては現状のままのようです。

2012年までの降着ルールと、2013年以降の降着ルールは一体何が違うのでしょうか?

2012年までの降着ルール

降着 ・・・ 「走行妨害が、被害馬の競走能力の発揮に重大な影響を与えた」と裁決委員が判断した場合、加害馬は被害馬の後ろに降着となります。

失格 ・・・ 「走行妨害により被害馬が落馬・競走中止した場合」、加害馬は失格となります。

2013年からの降着ルール

降着 ・・・ 「その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた」と判断した場合、加害馬は被害馬の後ろに降着となります。

失格 ・・・ 「極めて悪質で他の騎手や馬に対する危険な行為によって、競走に重大な支障を生じさせた」と判断した場合、加害馬は失格となります。
※被害馬が落馬や疾病発症等により競走を中止した場合には、上記の「失格」に該当しない限り着順は到達順位のとおり確定します。

競走能力の発揮という部分が無くなり、あくまで先着していたと判断されなければ降着はないとなっております。かなり曖昧なうえに、採決委員が走行妨害や落馬があっても「そんなに問題はない」と判断されれば降着・失格はないのです。これだと多少ラフな騎乗をしても勝てばいいという考えも生まれ、騎手や競走馬の安全が軽視される結果になります。

現在の降着ルールに不満を感じている競馬ファンは少なくなく、インターネットの某掲示板では「やったもん勝ち」「一歩間違えば大事故なのに」「制裁ぬるすぎる」といったルールに対する避難の声が多く見られますが、降着なしで馬券が外れた腹いせによるものだとしても数が多すぎます。

降着ルールの基準あやふやに。近年相次ぐ大きな落馬事故は「邪魔した者勝ち」の降着ルールによる影響か?

降着ルールは騎手と馬の命に関わってくる非常に重要なルールです。「邪魔した者勝ち」寄りのルールになればなるほどレースの危険度は増します。落馬事故は昔からよくありますが、近年はとくに大きな事故が目立っているように思えるのは筆者だけでしょうか?

自殺で亡くなった騎手の後藤浩輝騎手は亡くなる前年にリキサンステルスで落馬し、頸椎(けいつい)を捻挫する怪我を追い約7ヶ月間の休養。昨秋は福永祐一騎手がローブディサージュで落馬して右肩の靭帯断裂、右胸骨骨折など全治4ヶ月の怪我。今年夏は三浦皇成騎手がモンドクラフトで落馬し、助骨9本、骨盤などの骨折を負い集中治療室に6日間入るなど全治不明の大怪我で長期離脱。近年の落馬事故を振り返るだけで痛々しい限りです。全ての落馬事故が降着ルール変更の影響によるものではありませんが、ルール変更に伴ってラフな騎乗が増えてきているのだとすれば全く関係がないとも言えません。

競争ルールをたった一行変えるだけで騎手や馬の命が左右されると考えると、なんだか恐ろしいですね。騎手を失格にしたり、制裁を厳しくするのも良いかもしれませんが、何よりも問題なのはルール改定により失格・降着の基準があやふやになっていることで違反騎乗への抑止力が失われていることであると筆者は感じます。改悪ではなく、改善と呼べるルール変更に期待したいですね。