【桜花賞2016回顧】ジュエラーまず一冠!強かったチューリップ賞組!

4月10日(日)阪神競馬場では春の訪れを告げるクラシック第一弾・桜花賞(G1)が開催された。メジャーエンブレムが単勝1.5倍の支持を集め、以下、シンハライトが4.9倍、ジュエラーが5.0倍で続いた。馬場状態は良馬場。

注目の序盤のペースは前半600メートルが34秒8、800メートル通過タイムが47秒1だった。同じ日の芝1600メートル戦に7レースの4歳以上1000万クラスの競馬があったが、こちらは600メートル通過が35秒1で流れ、800メートルが46秒7。全体時計が1000万条件は1:33.8であるのに対し、桜花賞は1:33.4。ちなみに前日の古馬牝馬のマイル重賞・阪神牝馬ステークス(G2)の勝ちタイムが1:33.1である。

桜花賞と阪神牝馬ステークスの800メートル通過タイムは全く同じ。この時期の3歳牝馬のレースだから時計的にはこれで問題ないかもしれない。ペースも落ち着いたものとなった。

1着・ジュエラー

スタートを五分に出るとスッと後方の位置にポジションを収めた。道中は折り合いも付いており全く問題なしの競馬。後方2番手から勝負所の4コーナーでは外に持ち出しそのまま直線へ。

阪神の長い直線をフルに活かしての追い込みで最後はシンハライトと全く並んでの入線だったがゴールのところではわずかにジュエラーが出ているという結果となった。上がりはメンバー最速の33秒0。牝馬特有の強烈な切れ味だった。

ジュエラーはこれで4戦2勝となり、初の重賞制覇がG1、それも権威あるクラシックの桜花賞となった。

シンザン記念(G3)タイム差なしの2着、チューリップ賞(G3)タイム差なしの2着ときて、今回の後方一気の追い込み競馬でまたしてもタイム差なし、しかし今度は桜花賞制覇。キャリアも浅いため一戦ごとの上積みも大きかったと感じる。

父は皐月賞(G1)、有馬記念(G1)、ドバイワールドカップ(G1)勝ちなどがあるヴィクトワールピサ。姉にフィリーズレビュー(G2)1着、その他、スプリント重賞3勝を挙げているワンカラットがいる血統だが、ワンカラットの父は短い距離で好結果を示す産駒が多いファルブラヴ。

父がハーツクライに変わった4歳上の姉・サンシャインは2000メートルの愛知杯(G3)2着や同じく2000メートルの準OPのマレーシアカップを勝っており、父の距離適性を上手に受け継ぐと距離も幅広くこなせる一族だけにジュエラーの次走にも注目が集まる。

ヴィクトワールピサの産駒に2200メートルのすみれステークス(OP)を勝ったジョルジュサンクなどがいる。次走狙うは当然オークス、舞台は東京2400メートル、距離が持つことを期待したい。

2着・シンハライト

本来はもう少し前に付けたかったのかスタートしてすぐに鞍上の池添騎手が押していたようにも見えた。競馬自体は道中は9番手前後を追走。折り合いもついており直線も外を回ってあっという間に前の馬を飲み込んだ。

この馬も切れは相当なものである。前走のチューリップ賞と同じく最後はジュエラーとの叩き合い。着順は2着だが、負けた原因など無いに等しい2着である。

シンハライトが100%の競馬をしたなら、勝ったジュエラーはその上の150%の競馬をしただけにすぎないと感じる。

レースぶりに派手さがないため、強くは見せないが力量的には明らかに今年の3歳牝馬の中では上。厩舎が牝馬3冠を達成したジェンティルドンナを管理していた石坂正厩舎となる。ジェンティルドンナも桜花賞後は距離が持たないと半信半疑の声も囁かれていたがオークスでの結果は5馬身差の圧勝だった。

桜花賞後のケアや馬体管理、オークス(G1)までの調整方法をすでに知っているのは強みでもある。次走は初の関東への輸送なども含めて注目だ。

3着・アットザシーサイド

アットザシーサイドも道中は後方集団の11番手からの競馬。折り合いも十分で直線に向くといつもの堅実な末脚で脚を伸ばしてきた。

坂を上がってから同じような位置にいたシンハライトに突き放されたため、持てる力は全て出し切れたという感じにも見える。最後は決め手の差も出たかもしれない。

ただ、この馬も一戦ごとに競馬が上手になっている。2歳時の阪神JF(G1)でメジャーエンブレムにつけられた0.6秒差を今回はひっくり返した。

競馬で余分なことをしない馬であるため、少し距離適性から外れていたとしても牝馬限定の3歳同士の競馬であるなら次走も注目してみたい。

4着・メジャーエンブレム

この日はそれまでの競馬とは違い道中はインの6番手から7番手あたりでレースを進めた。このような形になったのは今回が初めてである。

阪神JFは2番手からの追走で4角先頭、前走の5馬身差圧勝のクイーンカップ(G3)もハナを奪っての競馬であり、いわば馬群に包まれることのない、ストレスのかかりにくい競馬がメジャーエンブレムの競馬スタイル。

昨年の9月のアスター賞(2歳500万)で唯一、道中6番手からという競馬をしているが、その時は馬群に包まれることなく外からスッとポジションを押し上げて3コーナーからは2番手でレースを進め完勝を収めている。

この日の桜花賞は、前に馬、後ろにも馬、右にも馬、左にも馬、という形となったのが初めてだっただけに馬自身が戸惑った可能性もある。

それと、おそらくこの馬はガチンコの速い上がり勝負は向いていないタイプにも見える。2馬身の差をつけた阪神JFも5馬身差のクイーンカップも自身の上がりはそれぞれ、35秒8と34秒7。

今回、初の中団からの競馬となったが上りは34秒2。これはこの日のメンバーでは4位タイの数字である。切れる脚がないため、父のダイワメジャーと同様に自分から積極的に動いていく競馬がやっぱり合っているように映る。

過去の競馬から実力負けということは考えられにくいので、次走に向けて再出発だ。

その他・総評

その他では、単勝248.9倍、13番人気のアドマイヤリードが最後方からメンバー中2位の上がり33秒2の脚を使い5着にまで追い込んできた。

阪神JFが6番人気9着、前走のチューリップ賞が11番人気16着という馬であるからこの人気も納得のものであったが、前2走がインコースから中途半端に押していっての競馬であり、今回は腹を括ったかのような最後方からの大外一気。

ドッシリと構えて落ち着いた騎乗をした鞍上の藤岡康太騎手もお見事であった。折り合いもつくタイプだから、オークスに出走できるようならこの馬も少し覚えておきたい。