高まるG1レース増設の気運、果たして適期か?
既に産経大阪杯が大阪杯としてG1に昇格されるのが決定的になっている。丁度この期間は高松宮記念と桜花賞のG1の谷間の週。そしてG2の中でも格式高い産経大阪杯をG1に昇格し、レース名も大阪杯に変更。距離はそのまま、春のG1戦が1つ増える事になる。今までの大阪杯の位置づけは、天皇賞(春)やヴィクトリアマイル、安田記念の前哨戦だった。しかし、今度は大阪杯がG1昇格する事によって、大阪杯を目標に仕上げてくる馬も増える。ただの叩き台は今年まで。来年からは、このレースも目標レースの一つとなる。
そして、12月に行われるホープフルステークスもG1昇格を見込まれている。来年は12月24日(日)が有馬記念だが、12月28日(木)に最終開催が決定している。そのメインレースがホープフルSで、ここでG1昇格されるのではないかと見られている。
G1昇格に必要な2つの条件とは?
日本は国際セリ名簿基準委員会の定める所であるパート1国であるため、国際基準に則ったレースの格付けをしなければいけない。集客が見込めるからと言って好き勝手にG1を増やすことはできない。G1に格上げするためには二つの条件がある。
まず必要なのが、賞金の額。1着賞金5000万円以上、総賞金額8500万円以上が現在の基準となっているが、これは大阪杯/ホープフルSのどちらも満たしている。現在の日本の中央競馬においてはさほど高いハードルとは言えない。
そしてもう一つの条件が、レースレーティングだ。レースレーティングの具体的な算出方法は割愛するが、過去3年間の平均でホープフルS(2歳G1)であれば110以上、大阪杯(4歳以上G1)であれば115が求められる。
ホープフルステークスは2013年まで開催されていた同名のOPレースではなく、ラジオNIKKEI杯2歳Sを前身とするレース。混同しやすいところだが、オープンのホープフルSはなくなり、ラジオNIKKEI杯2歳SがホープフルSに名称変更をするなど、わかりづらくなった理由には、過去3年間のレーティングを参照するのが、オープンのホープフルSでは都合が悪かったというのがあるのではないだろうか。
ではまず、G1昇格が内定とされる大阪杯から見てみると、2013年~2015年のレースレーティングは116.25, 114.5, 114.5で、平均は115.083となり、基準の115を超える。今年のレースレーティングが確定するのは年度終了後になるが、116以上が見込まれるため、2014年~2016年のレースレーティングで見ても基準値超え。大阪杯はG1昇格が内定していると見てもよいだろう。
一方でホープフルSを見ると、2015年は110.75、2014年は109.5。2年間の平均で見ると110は超えているが、2013年のラジオNIKKEI杯2歳Sが107と大きく落ちるため、110を割ることになる。とは言え、名称変更によるものか、出走馬のレベルアップは目論見通りといったところで、近2年水準の出走馬が集まれば、ホープフルSも基準の110を満たすため、G1昇格の資格を得ることになる。
こういった事情から、大阪杯ほどのトーンでG1昇格が叫ばれはしないが、もともとが2歳G1路線の拡充がホープフルS改名の狙い。たとえ来年実現せずとも、ゆくゆくは実現する既定路線であろう。
G1昇格後に求められる課題
但し、このままホープフルSがG1に昇格すると、朝日杯FSから続けて2歳G1が行われる事になる。この辺りも調整をしっかりしていかないとバランスが崩れてしまう。ただ単純にG1戦を増やせば良いという問題ではない。地方競馬もやる方はこの限りではないが、年末の締めは有馬記念と思っている競馬ファンが多い。こういった要素を考えると、ホープフルSがG1に格上げされると、暮れの風物詩・有馬記念が妙なポジションになってしまう。来年は仕方がないとして、G1に昇格させるなら、有馬記念より前に施行する方がベストなのは言うまでもない。
いっそのこと有馬記念を28日の開催にし締めくくりとしてしまえば収まりはよいが、JRA最大のドル箱コンテンツである有馬記念を年末といえども平日開催には出来ない。それはファンも望んでいない。ホープフルSをG1に昇格させるならば、番組改編は必ず求められる課題となるだろう。