【ファルコンS2016回顧】道悪・超ハイペースの極限レース制したトウショウドラフタ
3歳馬による芝1400メートルのG3・ファルコンステークスが土曜日の中京競馬場で開催された。
この日の中京の芝コースは不良馬場。芝コースで行われた勝ちタイムは、2レース・3歳未勝利(芝1200)が1:12.1。9レース・熊野特別(4歳以上500万下 芝2200)が2:19.4。そしてメインのファルコンS(芝1400)が1:25.0。相当力のいる馬場でのタフな一戦となった。
上がりも良馬場の時のような33秒台などとは無縁の世界であり、この日はどのレースでもラスト3ハロンは36~38秒ほどかかっている。この極悪馬場でスタミナ切れをおこした馬や不良が苦手な馬などに至っては40秒台を大きく超えてくるものも多かった。
一方でファルコンステークスの前半600メートル通過タイムは33.3、800メートルは45.3である。馬場状態を考えると猛烈なハイペースとなった。
先週の中京で開催された1400メートルの古馬500万下が良馬場で前半600メートルは34.4、800メートルは46.3。極悪とも言える不良馬場でのファルコンステークスで、これよりも速いペースで進み、まだ成長途上の3歳馬にとってはまさに極限ともいえるレース。
1着・トウショウドラフタはこの日は中団の12番手を追走。直線は外から確かな末脚で伸びて先頭でゴール板を駆け抜けた。後続馬に詰め寄られることもなく、この日に関しては完勝という形にも見えた。
ペースも流れてくれたのが向いた部分はあるが馬場状態の悪い中での競馬は上手。前走の東京で行われたクロッカスステークス(3歳OP 芝1400)でも稍重馬場の中、2着馬に0.5差を付けて勝っている。
父・アンライバルド、母・ウイッチトウショウ、母父・ジェイドロバリーという血統である。母のウィッチトウショウの一族には、宝塚記念(G1)や秋華賞(G1)を勝ったスイープトウショウなどがおり、ウィッチトウショウの母はエプソムカップ(G3)1着やマイルチャンピオンシップ(G1)3着などの成績があるサマンサトウショウ。
活力はある牝系だが、トウショウドラフタの不良馬場適性は母父のジェイドロバリーから受け継いでいるような気もする。ジェイドロバリーの代表産駒の1頭に、ローズステークス(G2)やチューリップ賞(G3)を勝ち、桜花賞(G1)でも1番人気2着という成績が残っているアドマイヤキッスがいる。
アドマイヤキッスは最後のレースとなった最初で最後の重馬場の京都牝馬ステークス(G3)を勝ち、高い道悪適性を見せている。ジェイドロバリーの特徴はダートもこなすパワーを伝えるところであり、トウショウドラフタの場合はこれに父・アンライバルドの芝適性などが伝わっている可能性がある。
これで1400メートルでの成績は【4-0-0-1】となった。ただのスピード馬ではない底力も多少備わっている部分があるかもしれない。今度は良馬場での競馬に注目してみたい。次走も期待。
2着のブレイブスマッシュもこの日はトウショウドラフタと同じく後方待機組のグループで道中15番手からの競馬。直線は内に潜り込んで脚を伸ばしてきた。
2000メートル以上の競馬では【0-0-0-2】。1600メートル以下のレースでは【2-4-0-0】。この馬の路線が決まったレースかもしれない。短い距離では安定している。
3着のシゲルノコギリザメは負けて強しの内容。この日のハイペースを2番手から追いかけていって最後まで粘っている。シンザン記念(G3)11番人気3着などがあり、今回も9番人気の低評価を覆しての3着好走。この先も評価が落ちた時に怖そうな1頭である。
1番人気に推されたが12着に敗れたシュウジ。母父にKingmamboが入っており力の要する馬場というのはこなしそうに見えたが残念な結果に終わった。
この馬は2月末で定年の橋口次郎調教師の元から須貝尚介厩舎に転厩してからの初戦の競馬であった。転厩初戦というのは環境の変化に慣れていないことも多く、力を出せない馬も多いがシュウジもこの難しさというものがでたのか。
須貝厩舎にはシュウジと同じく、定年のため松田博資厩舎から引っ越してきたアルバートドッグがいるが、この馬も小倉大賞典(G3)を快勝して臨んだ転厩初戦の中日新聞杯(G3)では最下位の18着に敗れている。まずは厩舎の水に慣れることが大事なのかもしれない。次走、もう一度見たい馬である。
この日の極悪馬場でまるっきり力を出せていない馬もいるだろうから、次走にも注目してみたい馬が多数いる今年のファルコンステークスであった。