追憶の名馬面【スペシャルウィーク】第1話「ライバル」

日本ダービー。ホースマンなら誰もが憧れるこのレースに対し、人一倍、強く憧れを持つ男がいた。

武豊。

1987年のデビューから、競馬界にある記録という記録を塗り替え続けてきた天才に、唯一欠けていたのが、このダービーだった。

1988年、コスモアンバーとの挑戦から始まり、これが10回目のダービー。ようやく、そのタイトルが、手に触れられるところまで来た。散らつく1996年の影を振り払い、周りの人々をシャットダウンし、武は一人、ダービーへ向けて集中力を高めた。

1998年6月7日。第65回東京優駿、日本ダービー。1995年に産まれた9212頭のサラブレッドの中から選りすぐられた18頭が、この大舞台に挑んだ。

18/9212。この数字を見ると、出られるだけでも名誉。という文句は、決して誇大なものではないと実感する。

人気はスペシャルウィーク、キングヘイロー、セイウンスカイの3強に集中し、4番人気以降は10倍台のオッズを付けていた。
いざ世代の頂点へ。

15時30分、ダービーのゲートが開いた。