【追憶の名馬面】スペシャルウィーク 最終話「最後の宿敵」
復活を遂げ挑むは、前年惜しくも敗れたジャパンカップ。
ダービーが子供の頃からの夢なら、ジャパンカップは騎手になってからの夢、と語る鞍上の夢を、また叶えるべく、2度目の世界戦に挑んだ。
11月28日、第19回ジャパンカップ。
日本総大将のスペシャルウィークの前に、フランスからの刺客が現れた。その年の凱旋門賞を制したモンジューが、ジャパンカップへ挑んできたのだ。
1999年凱旋門賞。90年代の競馬を深く記憶に刻み込む人なら、このArcの興奮を知っていると思う。極悪馬場で繰り広げられたモンジューとエルコンドルパサーの死闘は、自国に対し強い誇りを持つ、フランスの人々が異口同音に「勝ち馬の2頭いた凱旋門賞」と称えた名勝負だった。
エルコンドルパサーの為にも、モンジューを討たなくてはならない。
その日、府中でターフに別れを告げたライバルの無念を晴らすべく、スペシャルウィークは出陣した。
天皇賞と同じく、アンブラスモアのリードでレースは展開した。スペシャルウィークも、同じく中団付近での追走。マイケルが手綱を取るモンジューは、その外目からピタリとマークしていた。ゆったりとしたペースで静かに走る日、仏、愛、英、独、香、阿の優駿達。彼らが纏った色とりどりの勝負服は、万国旗のように晩秋の府中を彩った。チャンピオンとして、掲げられる国旗は果たしてどれか?
直線、ここまで各国を引っ張ってきたアンブラスモアは、坂を前に失速。変わってドイツのタイガーヒル、香港のインディジェナスといった世界のチャンピオンが、首位争いを開始する。
世界との壁はまだあるのか?
昨年、取り壊した壁が、再び府中のターフに聳え立とうとした時、スペシャルウィークが外からやって来た。後ろにはモンジューがいる。先に動けば苦しくなる展開だったが、武は相棒の力を信じ、一気に抜け出した。
来るなら来い!
完全復活を遂げた王者は、堂々と先頭に立つと、そのままアラブのハイライズ、インディジェナスらの追撃を抑え込み、チャンピオンの座を奪い取った。モンジューは、伸びを欠き4着。フランスで泣いたライバルの無念を、見事に府中で晴らしたのだった。