日本馬が凱旋門賞にこだわる理由
数ある海外GⅠの中でも日本人の凱旋門賞にかける情熱は熱い。もはや理由は二の次でただ単純に勝ちたいという執念が一番だと思うが、同時期に行われている欧州最高峰のレース、英チャンピオンSへ参戦した日本馬が1頭もいないのはなぜか。
レースの格では年によりけり出走メンバー次第でどちらが上とも言えないいずれも欧州最高峰のレースだし、近年特に種牡馬価値において2400mクラシックディスタンスより2000mチャンピオンディスタンス、2000mのGⅠ勝ちがない馬はスピード不足、ステイヤーと見る向きもある時代だが、日本馬はなぜ猫も杓子も凱旋門賞なのか、何が違うのかと言えば賞金ということになる。
凱旋門賞は元より欧州最高賞金のレースだったが、年々増額され今や芝のレースとしてはドバイターフ・シーマクラシックに次ぐ賞金となり、1着賞金は日本円にして3億強とチャンピオンSの約1億に対し2億以上の差がある。
ご存知のとおり日本競馬は世界最高の賞金体系を誇る。故に海外遠征する場合には賞金がネックとなりレース選択が限られ、欧州のレースとなると馬のベスト条件かどうかより、無理にでも凱旋門賞というのが通例となる。もっとも冒頭書いたように凱旋門賞を勝ちたいという執念が一番だとは思うが。
欧米の馬では有り得ない選択だったと言っていいだろうが、1600-2000mで世界1位のレーティングを獲得した馬がチャンピオンSではなく、5歳秋晩年を迎えてまでも、無茶で無意味な距離延長をして凱旋門賞に出走してしまうのも賞金が魅力だからなのだろう。
遠征費が何千万も掛かるのだから賞金が高いほうへ出走するのは当然と言えば当然かもしれないし、種牡馬ビジネスが主体の欧米競馬とレース賞金が主体の日本競馬との考え方の違いでもあるのだろう。
とは言え種牡馬価値を高めることは日本競馬でも重要なことで、勝つチャンスが高いと思える選択をするのは当然だろうし、もしチャンピオンSを勝てば2億の賞金差など大した金額ではないほど、種牡馬価値は跳ね上がったと思われる。
チャンピオンSのほうが条件がいいと思える馬や、斤量的に有利と安直に考えて国内牝馬二冠を捨てて3歳牝馬が挑戦したり、国内牝馬三冠と凱旋門賞の両睨みでローテーションが狂ったことには首を傾げたが、今年のように同時期に行われるレースの中で凱旋門賞がベストな選択だと思えるダービー馬の挑戦に異論はない。
シャンティの馬場はロンシャンの馬場より日本馬に向きそうな印象もある。今後首を傾げる日本馬の挑戦がなくなるためにも、日本馬のチャンピオンS参戦を見るためにも、今年こそ初勝利を挙げて凱旋門賞の呪縛から解放されてほしいと願っている。