追憶の名馬面【スペシャルウィーク】第1話「ライバル」
自分と同等、もしくはそれ以上の力量を持つ者を指す言葉にライバルというものがある。日本語では好敵手と訳される、この言葉のルーツは、ラテン語で小川という意味の、rivalis から生まれた。川をはじめとする、水源は人間が生きていく上で必要不可欠なもの。これを巡って争う人々を例えて生まれた言葉も、今日では、スポーツ界でよく耳にするモノになった。
我々が日々楽しむ競馬にも、ライバルという言葉は深く浸透している。
例えばテンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスの3頭が形成したTTG時代。平成ではビワハヤヒデ、ナリタタイシン、ウイニングチケットが作り上げたBNW時代など、力量が接近した馬達によって、熱いレースが繰り広げられた。
その瞬間の一つずつが、一編の物語の様に流れていく。しかし、テレビドラマや小説とは違い、ウマ物語には次のページがない。
誰が勝つのか?いや、それとも全員、全くノーマークだった馬にやられるのか?
次のページが分からないので、手元に握られている紙切れを忘れて、その光景にのめり込んでいく。この時間が、私は競馬の中で最も好きだ。