【追憶の名馬面】ダイワメジャー

4つ目のタイトルを獲得し、マイル王者として挑んだ宝塚記念は12着。久々の大敗となったが、この時は体調不良に見舞われていたという。そこへ蒸し蒸しとした鬱陶しい暑さも加わり、すっかり元気をなくしてしまった結果の大敗だった。

ドバイに続き、仁川にも浮かんだ名月を、彼はまた見上げる事しか出来なかった。

夏は例によって休養し、前年に引き続き毎日王冠から始動。強い馬には過酷な条件を強いる競馬界の掟に則り59kgという酷量を背負わされたが、ファンは1.8倍の1番人気に支持した。

ストーミーカフェとコンゴウリキシオーが作り上げた5F57.5秒の音速ペースの中、2,3番手に付け追走したが、直線は伸びを欠き3着。

オイッスー!と元気よくレコードタイムで彼を差し切ったチョウサンらと共に、次いってみよー!と挑んだ通算3回目となる第136回天皇賞秋は、かつて皐月の舞台で覇を競ったコスモバルクの蛇行事件に巻き込まれ9着。この時、バルクに騎乗していた五十嵐は、方々でバッシングを浴びせられた。

ダイワメジャーと五十嵐の関係を知って、この顛末を見ると、何とも言えない気分になった。カッコ悪いところを見せてしまったな…五十嵐よ。

連戦連勝だった昨年と同じローテを歩みながら、今年は歯痒い状態が続く。そんな中、やはり昨年と同じく、ダイワメジャーはマイルCSに挑んだ。こちらも通算3回目のチャレンジ。
人気は一番人気だったが、3.8倍という数字が示す通り、信頼度はイマイチな一番人気だった。

前走の敗戦を受け、安藤はハナに立つことも辞さない。という強気の姿勢でレースに臨んだ。

地を這う様にゲートを出ると、気合をつけてハナに立った。そのまま行くところへ、内から武幸四郎とローエングリン、更にはオリビエ・ペリエのフサイチリシャールがダイワメジャーに待ったをかけた。

彼らを行かせ、その後ろに付けるところだが、安藤はスグにハナを譲らなかった。マジでハナを叩く。という素振りを見せつけて、スタートから400m地点を通過した時、静かに前を譲り、いつもの絶好位を確保した。

グッと手綱を抑え、坂を下り、はち切れんばかりの手応えで最後の直線に入る。

馬なりでフサイチリシャールを交わし先頭に立ったが、まだ引きつける。彼方からスーパーホーネットと藤岡佑介が飛んで来た時、安藤は右鞭を抜いた。

ブルンとエンジンを掛けられた栗毛は、力強くゴール板へ突き進む。シュッと鋭く切れる格好良さはない。大型の重機などに漂う、野郎が憧れる格好良さを見せつけ、5つ目のタイトルを手にしたのだった。

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