追憶の名馬面・エガオヲミセテ
競馬場に笑顔が戻ってきたのは、1998年の春、阪神競馬場でした。彼女が選択したレースは、忘れな草賞。桜花賞はパスして、お婆ちゃんが勝ったオークスを目指す事にした。藤田伸二鞍上で挑むも9着。小さな青い花、ミオソティスはお気に召さなかったらしい。
いわゆる叩き2走目となったのは、オークストライアルのスイートピーS。ここで権利を取らなくては、オークスへは出走できない。青い花は嫌いだけど、薄桃色のスイートピーの花は気に入った様で、柴田善臣と仲良く花を摘み、頭上にスイートピーの冠を載せて、彼女はオークスへ挑みました。
ニコニコと果敢に先行し、4コーナーも手応え良く回り直線へ。明るい5月の日差しが、アーモンド色の馬体を照らした。ところが、スイートピーの冠が、ピューっと風に吹かれ飛んで行ったのか、坂前で脱落…。勝ったエリモエクセルには、気に入らない!と摘まなかったミオソティスの青い花の冠があった。もしも、あそこで摘んでいればなぁ…。
満を持して挑んだ夢舞台は涙の舞台。これでは納得出来ないし悔しい。何とか勲章を、と願う彼女は、また阪神競馬場にやって来た。梅雨明け間際の、蒸し暑い仁川には、人魚になりたい!と願う同性のお姉さん馬達が列をなしていた。唯一の4歳馬だった年下の彼女は、51kgという軽量を活かし3着に食い込んだ。タイム差はコンマ2秒。大健闘と言ってもいい内容でした。勝ったのはランフォザドリーム。鞍上にはダンディなオジサンがいました。