追憶の名馬面・エガオヲミセテ
体調不良だった秋ですが、GIを2走、共に1.0秒差以内に好走したエガオヲミセテ。徐々に体調が持ち直していったのでしょう。無言の上り調子の中で迎えた、1998年12月20日。舞台は、夏に人魚になり損ねた阪神競馬場。夏は茹だるように暑く、冬は凍えるように寒い、極端な競馬場に、若い姉ちゃんから色っぽい姉さん達が集結した。特別な牝馬になる為に、師走の戦いが始まった。
パーンっと飛び出したのは桜色のメンコを付けたキョウエイマーチ。再び仁川で桜を咲かすべく、逃げの手に出た。エガオヲミセテは、番手位置作戦を採らず、3,4番手の外目を追走。前を行くライバルを全て見られる絶好位だ。その内から、不気味に忍び寄ってきたのが、エリモエクセルと的場。怖いおじさんに睨まれるも、背中の若造、高橋亮は怯まず、手綱をプラプラとさせ、リラックスして走りな、と彼女へ指示を送り続けた。4コーナー、内にいたエクセルは後退。的場が優しくも厳しい檄を飛ばしたが、栗毛の少女は応えなかった。一方、エガオヲミセテは、やはり抜群の手応えで、キョウエイマーチを早くも捕えた。
直線に向く。キョウエイマーチが、女王の意地を見せ粘るも、その横をニコニコと、アーモンド色のフィリーが駆け抜けて行った。
『先頭はエガオヲミセテ!先頭はエガオヲミセテ!』
実況アナが彼女の名前を連呼する。先頭はエガオヲミセテ…先頭は笑顔を見せて!小田切ホースの味わい深さは、実況の電波に乗った時に現れます(笑)