追憶の名馬面・エガオヲミセテ

GI馬2頭と姉さん達を振り払った彼女は、ついに重賞タイトルを獲得し、クソ寒い師走の仁川は、笑顔に包まれました。後方で、ランフォザドリーム姉さんもオメデトウと叫んでいたと思います。

次の歓喜の訪れは早かった。1999年、少女から姉さんになった彼女は、京都牝馬特別を8着し、成馬式を済ますと、また阪神競馬場にやって来た。舞台も同じ1600m。しかし、今度はお姉さんだけでなく、おっさん達も相手にしなくてはならない。中でもマチカネフクキタルというオヤジは、かつて菊花賞を制したタフなオヤジ。かなりの強敵だった。

手練のおっさんを負かすには、手練のおっさんで。彼女の背中に現れたのは、夏に見たダンディなオジサン、河内洋だった。洋オジサンは、そこらへんでクダを巻いているオッさんとはレベルが違う。数多のヒロイン達をエスコートしてきた、かっこいいオジサンなのだ。河内のエスコートなら、菊花賞を制した栗毛のオヤジにも…。

雨の降る中、マイラーズカップのゲートが開いた。ポンと飛び出したのは、キョウエイマーチ。今度こそ、桜を…とマーチは、ハナに立った。私は、この頃のキョウエイマーチの逃げを見ていると苦しくなる。桜花賞で見せた可憐な逃げ脚ではなく、逃げないとやられる!という悲壮感が漂った逃げ脚を見て、あの可愛いマーチが…となってしまうのだ。
必死に逃げるマーチ姉さんの後ろ、ラチ沿いピッタリのロス皆無の位置に付けた河内とエガオヲミセテは、前を見ながら余裕の追走。前方の馬が蹴り上げる泥塊がぶつかっても、怯まなかった。4コーナー、静かな進軍を開始していた、彼女は、キョウエイマーチのすぐ後ろに付け、出口付近ギリギリのところで、スッと外へ持ち出された。この時の河内の手綱捌きはカッコよかった。