一体なぜ今年のセレクトセールはこんなに売上が伸びたのか?
今年で20回目となるセレクトセール2017は、大盛況で終わりました。2日間合計462頭が上場し、うち406頭が落札され、落札総額はなんと約173億円!近年セレクトセールの売上は毎年上がり続けており、昨年売り上げた約149億円は驚異的と言われておりましたが、今年はそれを大きく上回る結果となり、5年連続でレコードを更新する結果となりました。
ポッと出の新参者には負けられない、大物馬主が見せた“古豪の意地”
一体なぜ今年のセレクトセールはこんなに売上が伸びたのでしょうか?まず、セリ市の購買の流れについてですが、購買を希望をする場合は入札を行う必要があります。入札があった時点で、進行役の進行によってセリ価格が上げられます。最高額の入札を行った購買希望者が落札する、という流れになります。当然入札が多ければどんどん価格は上がっていくわけですが、今年は入札数の多さも目立ちました。
新種牡馬や繁殖牝馬の質が向上していることも価格高騰の一因だと思いますが、個人的には新規馬主として参戦した㈱DMM.comの存在が、今回価格高騰の流れを作ることとなった大きな一因だと感じております。
その流れを作るキッカケとなったのは、やはり㈱DMM.comがドナブリーニの2017を勝ち取った時でしょう。近藤利一オーナーや里見治オーナーといった大物馬主をおさえて3億7000万円というセール史上3位となる高額落札馬を出しました。
誰もが知るネットメディア事業を行う大手企業がいきなり馬主の世界へ参入してきて、いきなり歴代3位の高額落札馬を勝ち取り、話題をかっさらっていったわけですから、ポッと出の新参者にケンカを売られたような気分にさせられた古株のオーナーがいてもおかしくないかもしれませんね。
「アドマイヤ」の近藤利一氏、セール史上2番目の高値となる「5億8000万円」でディープ産駒落札
セレクトセールの常連であり、競馬業界の超大物馬主である近藤利一氏がイルーシヴウェーヴの2017を5億8000万円で落札したのは、その後間もなくのことでした。これはセレクトセールの過去最高落札額である2006年の6億円(キングカメハメハ×トゥザヴィクトリー、未出走で繁殖入り)に迫る歴代2位の高額落札です。ついさきほどまでの史上3位だった3億7000万円は1日も経たずして4位にランクダウンしたかたちとなりました。
㈱DMM.comももちろん参加しておりましたが、最後まで競っていたのがもう1人の大物馬主の里見治オーナーという点からも、古豪たちの意地のようなものが感じられますね。
ただ、確かに良血馬ではあるのですが、繁殖の可能性がある牝馬ならまだしも牡馬でこの落札額は異例です。この落札については賛否両論あると思いますが、近藤氏が古株オーナーたちを代表して威厳を保ったようにも見えたこの落札劇は、結果としてセレクトセールの売上に大きく貢献するかたちとなったわけです。
いずれにせよ、私のようなサラリーマンの一競馬ファンからすればまるで雲の上で繰り広げられる神々の戦いのようで、正直な感想としては「景気の良いことで」の一言に尽きます。企業が利益を上げ、賃上げをし、個人消費の拡大につながる経済の好循環を今の政府は目指しているようですが、企業が利益をためこんでしまっているのが実態で、実際に景気の良さを肌で実感するようなことはありません。今回の高額落札や新馬主である㈱DMM.comによる新たな試みが、我々競馬ファンに少しでも還元されることを心より願っております。