カジノ法案が成立した場合、「競馬」「パチンコ」業界は一体どうなるのか?

2016年の年末に急ピッチで可決された「IR推進法案」、通称「カジノ法案」という言葉を最近よく耳にします。2017年になり、東京オリンピック開催まで3年を切ったわけですから、今後ますます話題となっていきそうですね。

「カジノ法案」って何?なぜ今話題になっているのか?

このカジノ法案は、簡単に言うと「カジノ合法化」です。今まで日本ではカジノは「賭博」として刑罰の対象となっていたのですが、これを合法化し、国が許可する賭博施設を作って日本国民はもちろん、来日される外国人観光客にも楽しんでもらいましょう!という目的のもと発案された法案です。

「なぜ今になって合法化?」

2020年の東京オリンピックでインバウンド消費を拡大させるというのが、おそらく最大の理由でしょう。確かに、オリンピック開催までにカジノ開業が間に合えば、経済的な面で大きなプラスとなるでしょう。

「約10人に1人がギャンブル依存症」と言われる今の日本に、カジノができたら一体どうなるのか?

オリンピックとカジノの両方が楽しめることは大きなプロモーションになりますよね。かなりの経済効果が期待できますが、問題はオリンピックの後。カジノの経営は日本企業が行うのか?海外企業が運営するのか?共同で行うのか?といった課題はまだありますが、いずれにせよ、オリンピックが終わった後存続できるかどうかは結果として我々国民の利用によるところが大きいと思います。

今現在日本に存在するギャンブルと言えば「パチンコ」を筆頭に、「競馬」「競艇」「競輪」などがありますが、これに「カジノ」が増えることになるわけです。厚労省によると、ギャンブル依存症の疑いのある人は、国内で536万人にのぼり、その割合は成人男性で9.6%。これによれば「約10人に1人はギャンブル依存症」と言えます。

そんな中でカジノが出来ればギャンブル依存症に拍車が掛かり、ますますギャンブル依存症が増えることになるかもしれませんね。

日本の代表的な公営ギャンブル「パチンコ」「競馬」はどうなる?

カジノが合法化されることでますますギャンブル依存症問題は深刻化しそうですが、筆者は運営の仕方によっては上手くまわる可能性もあると思っております。少なくともギャンブル依存に関する問題は今とそこまで変わらない可能性もあると思います。

現在「パチンコ」業界は減少傾向にありますが、「競馬」や「競艇」の業界は全盛期に比べれば減少したとはいえ、近年は売上が上昇傾向にあります。何より利用者の層が一昔前に比べて一段と広くなった印象があり、競馬なんかはとくに顕著に変わった印象があります。ワンカップ片手に若干薄汚い格好のおっさんがワイワイやってるといったイメージはもはや古く、今は女性も家族も気軽に楽しめる娯楽で、競馬場もキレイになりアミューズメントパークとしても楽しめるクリーンで賑やかなイメージが定着してきております。

おそらくカジノが出来ても競馬・競艇あたりの公営競技にはさほど影響はないと思っております。逆に、最近逆風が吹いているパチンコ業界はこれからどんどん衰退していくでしょう。

個人的にパチンコの最大の魅力は、その気軽さにあると思っております。大体一駅に1つくらいはあるんじゃないか?というくらいどこにでもあることから、習慣的に利用することができます。誰でも簡単に利用できてしまうことから、庶民のギャンブルの代表的な存在とも言えます。

しかしカジノは違います。入場料金があったり、ドレスコードがあったりと、どちらかと言うと富裕層向けの娯楽といったイメージがありますよね?実際、カジノは富裕層の娯楽というイメージが全世界的に共通してあると思います。

庶民向けの代表的なギャンブルであるパチンコ業界が衰退していき、富裕層向けの代表的なギャンブルであるカジノ法案が可決されるかもしれないなんて話になっているわけです。

「貧困ビジネス」から「富裕ビジネス」へ。「競馬」はシフトの受け皿として重要な役割?!

聞こえは悪いですが、パチンコビジネスは金持ちから取るより、庶民、貧乏人から取るようなビジネス、いわゆる「薄利多売で貧乏を回すような貧困ビジネス」の部類に当てはまると筆者は思います。これまで行われてきたのがその貧困ビジネスなら、今日本がやろうとしていることはその逆。

なぜ今「貧困ビジネス」から「富裕層ビジネス」へシフトしようとしているのか?

おそらく最大の理由は、新たな層を取り入れようとしているからではないでしょうか。今日本のギャンブル業界で不足している層は「富裕層」と「外国人」です。カジノ法案が通りカジノがオープンされれば、日本の富裕層や、日本に観光しに来た外国人といった新たな層を開拓することが出来ます。

パチンコはまだまだブラックなイメージが強いですし、「パチンコ=ギャンブル依存症」というイメージを持っている人も少なくないでしょうし、とくに若者のパチンコ離れはパチンコ業界で深刻化されています。逆に競馬はクリーンなギャンブルとして知名度を上げてきていますし、今の時代インターネットがあれば馬券はどこにいても気軽に買えます。競馬が新たにクリーンな庶民のギャンブルとして定着してきてくれれば、パチンコの売上は十分そっちでカバーできるようになってくるでしょう。

カジノ合法化で新たなターゲットを拓き、競馬や競艇といったスポーツ的要素の強いクリーンな公営ギャンブルがパチンコ客のシフト先として受け皿になってくれれば一番ベストなのではないでしょうか。

カジノ専門家や経済の専門家でも何でもないただの競馬ライターの素人意見ですが、今日本は「公営ギャンブルにおける搾取制度を大きく変えようとしている最中なのかもしれない。」そんなふうに感じております。