【競馬】なぜメルボルンカップには毎年30万人以上もの来場者が集まるのか?

現地時間の11月3日、オーストラリアのフレミントン競馬場では「第155回メルボルンC」(G1、芝3200m)が行われた。今年は2頭の日本馬(フェイムゲーム、ホッコーブレーヴ)が出走したが、結果はフェイムゲームが13着、ホッコーブレーヴが17着と残念ながら日本勢は惨敗であった。

メルボルンCというレースについて実はあまり知らないという競馬ファンの方も多くいるかと思うので、ここでメルボルンCについて少し紹介させていただきたい。メルボルンCはオーストラリアで約150年の歴史を誇る歴史あるレースであり、その人気は日本における競馬文化では考えられない人気ぶりだ。競馬場にはなんと毎年30万人以上もの人が訪れる競馬の一大イベントである。昨年の有馬記念の入場者数は約11万5千人で、この3倍もの人が集まると考えたらとんでもない規模のレースであることがお分かりいただけると思う。さらに毎年この競争が行われる日はメルボルン大都市圏ではメルボルンカップデーとして祝日になり、他の祝日でない都市でも多くの人が仕事そっちのけで昼に会社の近くのカフェなどに集まりこのレースを見て応援すると聞く。まさにオーストラリアの国を挙げてのお祭りである。

そんな大きな競馬の祭典で日本馬が優勝したことがある。2006年、「第146回メルボルンC」を優勝したデルタブルース(岩田康誠)だ。デルタブルースが優勝した際に日本ではこのことは大きく取り上げられなかったが、現地オーストラリアでは全国的に取り上げられた。鞍上の岩田騎手はレース勝利後の馬上インタビューで「ハッピー!スーパーホース!」とだけ答え、オーストラリアではメルボルンC史上最短のインタビューとして話題になった。メルボルンCを勝つということはオーストラリアでは大変名誉なことであり、優勝した岩田騎手はオーストラリアで一躍ヒーローになったのだ。賞金額を知らなかった岩田騎手は1着賞金3,600,000豪ドル、日本円にして約2億8800万円という賞金に驚いたと言う。有馬記念の1着賞金2億円を8800万円も上回る超高額賞金である。驚かずにはいられないだろう。

そんな大きな祭典メルボルンCにはもう一つの注目すべき一面がある。なんと来場者数の半分が「女性」なのだ。というのも、元々欧州などでは「競馬は神聖なスポーツ」と認識されており、伝統的な大レースにおいては競馬場への入場に正装義務を科すなどしているところが多い。オーストラリアのメルボルンCもそういった伝統があり正装する来場者が多く、競馬同様にファッションを重要視しているのだ。レース期間中には「メルボルンC・カーニバル」といったファンションとアートのイベントが行われたり、競馬場内のローズガーデンではファッションコンテストなどが開かれる。これには世界中のセレブリティが集まり、これまでダイアナ妃や名だたる映画俳優や女優、歌手、トップモデルたちが参加してきた。来場する女性は華やかなドレスやアクセサリーを身にまとい、競馬同様にファションのイベントを楽しむことができるのだ。

今年のメルボルンCの勝馬であるプリンスオブペンザンスは女性騎手のミッシェル・パインが騎乗し、史上初の女性騎手による優勝者が出たということもあってターフの上でも女性による活躍が目覚ましい。日本でも最近では女性による来場者は増えてきてはいるものの、まだまだ「競馬は男性が楽しむ娯楽」という印象が強い。今後日本の競馬もレース自体を楽しむ他に、レース以外に様々なイベントを盛り込んでより多くの人に競馬を楽しんでいただければ一競馬ファンとしてこの上なく喜ばしいことである。