意外とお手軽?庭先取引の現場に遭遇。

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庭先取引とは、馬主が競走馬を手に入れる方法の1つであり、生産者から直接購入することを指します。その他には、競走馬を競売にかけるセリ市、いわゆるセールなどが一般的です。競馬玄人の方なら説明しなくても分かってると思います。もう10年程前になりますが、社台系列ではない某大手牧場に仕事で立ち寄ったのですが、ある関東の調教師と馬主さんが丁度その牧場に来ていました。どちらも有名なかたです。ちなみに、社台系列ではない牧場と言っても対立関係にあるわけではなく、種付けなどは社台系でします。

その馬主さんは、とある1歳の牝馬をもの凄く気に入ったようで、他の人の倍出すから売って欲しいと牧場長に掛け合っていました。その時はまだ買い手が付いていませんでしたから5000万円を提示されたところ、馬主さんはその安さに少し驚いた様子でした。即答で商談が成立し、その馬は無事にデビューを果たしG1を勝っています。

私は庭先取引はもっと秘密ごとみたいにしていると思ったので、そのオープンさを意外に感じました。実際はケースバイケースで、今回のようなパターンもあれば、想像していたように秘密みたいな時もあるとのことでした。私はその馬主さんとは面識はありませんでしたが、調教師の先生とは面識があったので、「珍しい所で会うね」と言われ、少し立ち話をしている最中に庭先取引が行われていたのです。

馬主さんにも色々なタイプがいます。大前提としては馬が好きというのは当たり前ですが、競走馬育成に関しても全て調教師に任せる方、あれやこれやと口を出す方。何が正しいというわけではありませんが、実際に馬主さんの中にも馬を見る目がある方はいます。中には調教師よりも相馬眼があるのではないかと思うくらいの方もいます。多くの競馬関係者が走ってみないとわからないと言う馬のことを、他の分野で成功を収めた方が専門家以上にわかっている。これは凄いことです。

セールの場合はセリという特性上、取引金額が公になるため高額で取引された馬や、低価格で販売された後の活躍馬などが話題に登ることも多いですが、庭先取引は個人のやりとりになるため金額を公に出す必要はありません。キタサンブラックもヤナガワ牧場から大野商事へ庭先取引された馬ですので、いくらの金額が動いたのかは定かではありませんが、血統背景から見てもセールに出したとしても、さほどの金額にはならなかったでしょう。それが日本競馬における歴代獲得賞金の7位に現段階でつけ、まだ伸び代を残しています。お金の話になってしまいましたが、牧歌的の代表格である現場でそれとは程遠い金額がほいほいと飛び交う、不思議な世界ですね。