ジョッキーの心の広さがわかる話。
トレセンに行くと当然の事ながら競馬開催日及び、開催日前日の午後以外は、休日の月曜日以外ジョッキーがいる。調教をつけ終わったジョッキー。記者と談笑するジョッキー。調教師と真剣な表情で、話すジョッキーなど、様々な表情を見る事が出来る。
ある日、G1開催週の、美浦トレセンでの事。その日は栗東からわざわざ、前日入りで武豊騎手がある馬の調教をつけにきていた。基本的に調教師と確認の話が終わるまでは声をかけないのが当時のルール。暗黙の世界です。
そして、当然有力馬に騎乗する武豊騎手のコメントは各社欲しい。取材攻勢を受けると、ようやく、解放され、マスコミは一気に宿舎でパソコンを叩く。そんな時に顔見知りの某スポーツ新聞の記者が、「こいつ新人なんだけど、なかなか仕事が出来る。少しミーハーな処はあるけど憎めない奴だから可愛がってよ」と新人記者を紹介され挨拶を受けた。
礼儀正しいなと思った反面、気になった事が一つあった。ミーハーと言うこと。案の定嫌な予感は当たった。武豊騎手にサインを求めた。これだけならまだ良かったのだが。挨拶をしてサインをもらう。これは記者の特権。ここまではぎりぎり許されるだろう。武豊騎手も上機嫌だった。仕事が出来るからである。サインをもらうまでの外堀を埋めるのが早かった。
その後、ある武豊騎手より年上のジョッキーにサインをもらおうとしたところ、「豊のとこにさっき行ってサインもらったよな?順番が逆だろう」と怒りを買ってしまった。しかし、この新人はフォローが上手いので逆に打ち解けてしまった。騎手はみてないようでみている。やはり年功序列の世界。武豊騎手はスーパスターだが、その先輩騎手も名の知れたスター騎手。プライドが許さなかったのだろう。とは言っても、一般の方が競馬場などでサインをもらう際は関係ありませんから、ウィナーズサークルの前に陣取っていればサインは誰かしらからもらえますので、お好きな方からもらってください。