【有馬記念2016予想】キタサンブラック今度こそ正真正銘の主役に
今年の有馬記念も豪華なメンバーが揃ったが、主役はやはり何と言ってもキタサンブラックだ。これまでの戦績は13戦8勝、3着を外したのが東京優駿だけという抜群の安定感が非常に魅力だ。GⅠレースも菊花賞、天皇賞春、そして前走ジャパンカップを快勝して現時点で3勝。正に主役にふさわしい存在だ。
そんなキタサンブラックは前走ジャパンカップで完璧とも言えるレース運びで勝利してみせた。並み居る強豪たちの中、最も得意なスタイルである逃げを選択。名手武豊騎手の絶妙のペース配分にエスコートされ、一度も先頭を譲ること無くゴールインした。それはまさに王者の走りで、現役最強を名乗るに相応しいはずである。
世界で強さを発揮している世代の菊花賞馬
世代レベルに関してはクラシック戦線真っ只中においてはさほど注目されていなかった現4歳世代。しかし、一年を終えて振り返ってみれば、皐月賞・ダービーを勝利した二冠馬ドゥラメンテはドバイシーマクラシックで落鉄の不利の中ポストポンドの2着。そのドゥラメンテやキタサンブラックに煮え湯を飲まされ続けてきたリアルスティールも、ドバイターフに出走すれば見事に優勝してみせ、サトノクラウンも先日の香港ヴァーズで世界の強豪ハイランドリールなどを抑え見事に優勝。
これほどまでに豊作だった年があっただろうか、というほどに活躍している世代で、最も強い馬が勝つという菊花賞を勝ったのがキタサンブラックだ。それを証明するかのように勝ちに勝っている。ドゥラメンテの圧巻の走りによって蓋をされていたタレントたちが外へ出ることで華を開かせたといったところだろう。
どうしても人気の出ない最強のダークホース
今でこそ主役の座を不動のものにしたかに見えるキタサンブラックだが、ここまでこの馬が活躍すると思っていた人がどれだけいただろうか?これまで1番人気になったのは近走の2度しかなく、前走ジャパンカップでも、上位3頭が人気を分け合う形の3.8倍-4.2倍-4.5倍と、かろうじて1番人気には推されたといった結果。キタサンブラックは走っても走っても人気にならなかった。この理由の1つは血統が地味だからではないだろうか。
父ブラックタイドの弟はあの偉大なディープインパクトだが、競走馬としても、種牡馬としても実績を比べると圧倒的に弟に見劣ってしまう。ブラックタイドは重賞勝利こそあるものの、GⅠは未勝利。ディープインパクトと両親が一緒の代用として種牡馬入りしたというのが実際の所。しかも母父サクラバクシンオーは短距離専門種牡馬と言っても過言ではない。中距離以上での活躍を不安視してもおかしくはないこの配合だったが、そんな血統的な地味さとは裏腹にこの馬は中距離以上で輝きを増しているのだ。
そして、もう1つの理由としてはいやらしい話、嫉妬心からではないかと推察する。キタサンブラックの馬主は皆さんご存知のとおり北島三郎氏。日本演歌界の頂点に君臨し、芸能界で大成功を収めたような人が更に競馬界でも成功するなど、庶民から見れば不公平に感じてしまう。そんな嫉妬心からか、キタサンブラックの能力に懐疑的だった競馬ファンも、さすがにいよいよ無視できないレベルまで成長した結果がようやくの1番人気と言うことだろう。
絶好の枠順「1枠1番」
キタサンブラックの過去の戦績は先述の通り13戦8勝。ただし、1枠1番に限定した場合このデータは4戦4勝となる。しかも未勝利や条件戦などではなく、GⅠとGⅡを2戦ずつだ。もとより売りである抜群の安定感は更に盤石となる。1枠1番がどれだけキタサンブラックにとって得意な枠であるかというのがお分かりいただけるだろう。
更には近2走で立て続けの1枠1番、今回で3連続になる。抽選は生中継とは言え、いささか出来過ぎでもあり、決定的な証拠は当然ないが、ヤラセ疑惑が起きるのも仕方のないところかもしれない。とは言え、陣営の顔とも言える武豊騎手と北島三郎オーナーの持つ運を想像すれば、常人には考えもつかないような当たり前に実現してしまっても不思議さはない。
自在の脚質に盤石の体制
得意戦術の逃げをするためには最初のコーナーで蓋をされるわけには行かない。逃げ馬にとって最内枠である1枠1番の優位性は非常に単純だが、キタサンブラックは単純な逃げ馬ではない。菊花賞では中団後方あたりからレースの上がり3F最速をマークし見事にまくってみせた。逃げは選択肢の一つでしか無い。
とは言え、他の陣営からしたら最内枠に有力逃げ馬が配置されている状況。ここでキタサンブラックを自由に行かせてしまってはジャパンカップの二の舞いになるのは火を見るより明らかなので、指をくわえて見ているわけにはいかない。そこで、慌ててキタサンブラックを止めるためにかぶせに行ってしまえば明らかにオーバーペースになる。そうなればキタサンブラックは自在の脚質で後ろからゆっくり横綱相撲を取ればよいだけ。
何がなんでもキタサンブラックを止めなければいけないというレースでもない。かの世紀末覇者は、あのまま勝たせては他の馬は一年間何をやっていたのかという空気があったが、キタサンブラックは適度にスキがあるように見えるのも、そういった意味で非常に有利と言える。
去年は有馬記念に勝てば名曲「まつり」を歌うと公言していた北島三郎オーナー。結果は3着に敗れたが、サプライズで熱唱してくれた。紅白歌合戦を卒業した際にも歌われた、まさに年末を締めくくるこの時期に相応しい代表曲。今年も有馬記念を北島三郎氏が観戦にくるのは間違いないだろう。
去年は優勝馬ゴールドアクターとの間にあった0.1秒の差。ここを中山の舞台で覆して見せるか。見事に成長を果たした今のキタサンブラックならGⅠ連覇の可能性は極めて高いと見ていいだろう。年度代表馬がほぼ当確しているモーリスを脅かすことが出来るのは、キタサンブラックが有馬記念を優勝することだけだ。