【凱旋門賞2022予想】日本馬4頭の最終追い切り・調教内容を分析

総賞金500万ユーロ(約6億5000万円)という欧州一の賞金額を誇り、昨年はIFHAが発表する「世界のトップ100G1レース」の第1位に輝いている凱旋門賞。来る10月2日に開催ということで、いよいよ決戦の時が迫る。日本から参戦する4頭の精鋭も現地で最終調整を終えてきた。調教の動画や時計を見ることは出来ないが、各陣営のコメントやトーンから各馬の状態面を判断していきたい。

タイトルホルダー(牡4、栗田徹厩舎)

日本から参戦する4頭の中で、最多のG1・3勝を挙げる“大将格”タイトルホルダー。最終追い切りは横山和生騎手を背に、コワイラフォレ調教場の芝コースで3頭併せを消化。約6Fから現地で滞在する小林厩舎の2頭を目標に追われるかたちでスタートし、前半はゆったりと進め、ラスト4Fまでは我慢を利かせた。直線に入ったあたりで並びかけると、最後は1頭と併入、もう1頭に先着した。

岡田スタッドの岡田牧雄代表は凱旋門賞について「タフな競馬で、我慢比べなのが凱旋門賞だと思っている」と前置きした上で、鞍上の横山和生騎手に対して「異次元のスタミナを持っていると思っている。だから最初からある程度飛ばして、同じペースで行けと(指示した)」とコメント。タイトルホルダーの売りは何と言っても先行力と豊富なスタミナ。岡田氏の戦術はまさに同馬の売りを全面に押し出した戦法と言っていい。

追い切りはしまいだけを伸ばすような内容で、鞍上の横山騎手の「リズムや精神状態を見ながらの追い切りでした」というコメント通り、活を入れるというよりは馬のペースとリズムを鞍上にしっかり確認させるような内容。馬の追い切りというよりは、鞍上の意識に重点を置いた追い切り内容だったとも言えそうだ。多頭数でも気負わず馬のリズムとペースをしっかり掴んで持ち味を活かす競馬ができるかどうか、横山騎手の手綱さばきが大きなカギとなりそうだ。

ドウデュース(牡3、友道康夫厩舎)

28日、エーグル調教場の芝周回コースで単走。約9Fという長めの追い切りで、序盤はゆったりと入り、直線ラスト2Fで気合いをつけられるという内容。21日の1週前追い切りでは、リオン調教場で帯同馬のマイラプソディと併せて負荷がかけられた。鞍上の武豊騎手は乗らなかったが、当該週にはジョッキーが騎乗しないのはいつも通りのルーティンなので、割り引く必要はないだろう。

友道調教師は「スピードを求めるよりも、最後に右手前から左手前に変えるのを意識しました」とコメント。前走のニエル賞は直線で伸びきれずに4着に敗れたが、右手前のまま走ってしまったことが敗因の一つとも言えるだろう。陣営はかねてから「右手前で走るのが好き」と指摘しており、手前替えを克服することに主眼を置いた内容の追い切りを消化したかたちだ。状態面についてはすでに整っており、あとはコーナリングから直線へ向けての動きがスムーズに出来さえすれば、直線は前走以上のパフォーマンスが発揮できるのではないだろうか。

ディープボンド(牡5、大久保龍厩舎)

2年連続で凱旋門賞に挑戦するディープボンドは、28日に川田将雅騎手を背にエーグル調教場の芝周回コースで、エントシャイデンと併せ馬を消化。道中は相手を追いかけるかたちで、しまいだけ脚を伸ばして併入した。川田騎手は「日本で言えば、6F86秒0くらいかな。ただ、もっと強い負荷はかかっている感触はあります」とコメント。

昨年もレースを経験している点は大きなアドバンテージだ。シャンティイ競馬場には4つの調教場があり、調教コースを選ぶのも一苦労だが、この馬はすでに昨年いろいろなコースを試している。馬に合った調教場を選べるので、探りながらの昨年よりは調整はやりやすいだろう。昨年も最終追いはエーグル調教場で行っており、今年も同コースを選択。スピードは出していない様子だが、鞍上が言うようにやはり重たい馬場で負荷は思っている以上にかかっているはずだ。ただ、おそらく陣営もそれは当然把握しているはずで、必要以上に追わなかったのはやはり昨年の経験があるからこそだろう。

大久保師は「中2週でおつりがなかったというのが去年の反省だった」とコメントしており、今年は直行ローテーションで挑む点もやはり昨年から学んだ点。昨年の経験を糧にし、極めて順調な臨戦過程でレースに臨めそうだ。

ステイフーリッシュ(牡7、矢作芳人厩舎)

ドーヴィル大賞・2着をステップに本番へ臨むステイフーリッシュ。28日、エーグル調教場の芝周回コースで、C.ルメール騎手を背に約6Fの併せ馬を消化。受け入れ先の清水裕夫厩舎の馬を追いかける形でスタートし、徐々にペースを上げていき最後は同入した。鞍上のルメール騎手は「サウジの前に乗った調教の時と同じくらいのコンディション」とコメント。

8月15日にフランスへ入り調整を重ねてきており、すでに2ヶ月ほど滞在しているのは大きな強みだろう。環境への慣れはこの馬が一番できているのではないだろうか。海外戦は3戦して2勝、2着1回と好成績で、国内では善戦止まりだった馬が海外で開花してきている印象を受ける。矢作師も「トレセンの慌ただしい環境が合わないんだと思う。海外だと全然違うからね。ヨーロッパ仕様の走りになってきているし、非常に順調」とコメントしており、国内よりも海外の方が合うことを示唆。

また、鞍上のルメール騎手は日本に移籍する前は2003年のパリ大賞を優勝するなど現地フランスで活躍していた名手。日本で目覚ましい活躍を遂げているが、ロンシャンの馬場を知り尽くしている騎手である点は忘れてならない。欧州仕様の走りが身についてきているステイフーリッシュと、欧州の経験が誰よりもあるルメール騎手との相性は抜群と言っていい。問題は上位で通用するかどうかだけで、本来の力を一番発揮できるのはこの馬ではなかろうか。