重賞初制覇を飾った前走・新潟大賞典の内容が印象的だったシリウスコルト。スタートではじわっと出して周囲の出方をうかがいながら、結果的にハナを奪取。古川吉洋騎手が「ハナに行くのもひとつの選択肢だった」と振り返るように、意図的な逃げの戦術が功を奏した。外差しが決まりやすい馬場傾向のなかで、あえて内を通り押し切ったレースぶりは評価に値する。道悪を味方にしながら、しぶとい先行力をフルに発揮し、他馬に影を踏ませぬ完勝劇だった。

もともと「逃げなくても競馬はできる」が、「逃げた方がさらに良さが出る」というタイプ。自在性を持ちながらも、逃げる形になった時のパフォーマンスは格段に上がる。今後もこの馬の真価を引き出す鍵は、折り合い面とペース判断にかかってくるだろう。実際、控える競馬では折り合いを欠くリスクが高く、安易な戦法変更は避けたいところだ。

今回は連勝中でハンデG3連戦となり、斤量は58.5キロと過去最高でトップハンデを背負う。前走57キロで勝っているとはいえ、位置を取りに行けるかどうか、初めての重いハンデに対する対応力が試される一戦だ。

舞台となる福島は、デビュー戦で1200mの新馬戦を勝利し、2走前の福島民報杯では正攻法の競馬で快勝するなど相性抜群のコース。田中勝春調教師も「暑いけど元気がある。先行力があるので小回りは合う」と太鼓判を押す。ペース次第で自在に立ち回れる器用さはこのコースで大きな武器となる。

一方で、昨秋の福島記念では14着と大敗しているが、大外枠からヨレ気味のスタートとなり、向こう正面で後方勢が早めに仕掛ける苦しい展開も響いた。内容を精査すれば敗因は明白で、度外視していい一戦だ。むしろ近2走のように先行して押し切る形が整えば、福島では再び高いパフォーマンスを発揮できる。

自在性、先行力、小回り適性、そして近走の勢い。これらを兼ね備えた今のシリウスコルトにとって、今回の舞台はまさに理想的な条件が揃ったと言える。トップハンデという課題はあるが、それを乗り越えるようなら、今後の中距離戦線でも主役級の一頭として注目される存在になるだろう。重賞連勝へ向け、視界は良好だ。